あらすじ
自らの葬儀の手配をしたまさにその日、資産家の老婦人は絞殺された。
彼女は、自分が殺されると知っていたのか?
作家のわたし、ホロヴィッツはドラマの脚本執筆で知りあった元刑事ホーソーンから、この奇妙な事件を捜査する自分を本にしないかと誘われる…。自らをワトスン役に配した、謎解きの魅力全開の犯人当てミステリ!
7冠制覇の『カササギ殺人事件』に並ぶ傑作!
(創元社より)
感想・レビュー
このミステリーがすごい!海外《2020年》第一位ノミネート
イギリスの作家、アンソニー・ホロヴィッツ氏の小説です。初読みです。
先に著者のミステリ賞を七冠制覇した「カササギ殺人事件」を読もうと思ったのですが、今回はその後日本に上陸したこっちを読むことに。
こちらの本作は、全十作?程度予定しているシリーズの第一作にあたるそうです。
そんな本作を読んだ所感としては、もう素直に面白かったです。
あらすじの一行目から気になる感じなのですが、まさかの著者自身がワトソン役となって物語に登場するという展開にもまた驚きました。
著者の一人称独白を元に、孤独な元刑事・ホーソーンをホームズとして物語は動いていきます。
複数の事件が並行しつつ、過去の事件も交わってくるのは王道とも言えますが、何より本作の面白いところは、著者がその事件を小説にしようと試みている内面を知りながら事件解決に向かっていく新鮮さでしょうか。
謎が謎を呼ぶように、めくる頁も止まらなくなる展開が続いていくので、構成も上手いなぁと思いました。
トリックのレベル自体は、そこまで高いこともなく至って普通ではありましたが、複数の事件のうちの一つである「悲劇」はお見事でした。ここの絡繰りと見せ方のタイミングは絶妙でした。
著者は作品内でシェイクスピアの4大悲劇の一つである「ハムレット」を多用してもいました。その意味が後半で更に強くなっていきます。
あとはホームズ役であるホーソーンがとても魅力的に描かれていたこと。
シリーズものの第一作ということで、謎が多くあるものの、孤独な一匹狼から漂う、ハードボイルドチックな感じが著者との相性、掛け合いなんかも含めて楽しく読ませていただきました。
現状、ホーソーンのことでわかっていることをリスト化してみると、
- 別居している妻がおり、十一歳の息子がいる。
- 殺人捜査課に在籍していた才能ある刑事だったが、人望はない
- 酒は飲まない、タバコは吸う。
- 読書会に参加している。
- テムズ川沿いの高級アパートメントで暮らしている。
- 同性愛者を嫌悪している(何か理由がありそう)
- 刑事時代、逮捕された小児性愛者を階段から突き落とした為、クビになった
- new→プラモデル製作が趣味(最後に判明)
大雑把に纏めるとこんな感じでしょうか。
息子などは出てこなかったんですが、もしかしたらこの小児性愛者や、同姓愛者とかに、何か関わりがあるのかもしれませんね。
奥さんは、実は割と序盤に出てきていたことが最後に判明します。そして何より、アンソニー氏が小説を書くことすら全てホーソーン氏の手のひらの上であったことも判明。
この辺の理由は明かされず、今後にどう響いてくるのか、その辺も楽しみなところですね。
あと著者は、実際に脚本家として映画やドラマも多数手掛けており、スティーブン・スピルバーグやピーター・ジャクソンなどという超豪華メンバーと脚本会議するシーンなんかもあって、映画好きにとってはすごく面白かったですし、めっちゃ笑いました。
正直な話、どこまでが実話で、どこからがフィクションなのかわからなくなるのですが、実際に出てくる登場人物は、名前を変えたり、本名だったりもすので、余計にアンソニー氏に真実を聞いてみたいです。
あと書きながら今思い出したのですが、最後のシーンで、二人の関係性が死地を超え、ようやく和解し始めた時、
「トニー」とホーソーンが言った時、著者が「私をトニーなんて言う人はいない」みたいなことを怒って言うシーンあるのですが、今更?ってなってまた笑えて、本作は結構、こういう小さな笑いを取るのも上手いのも魅力です。
確かに海外映画っぽいかも。
本作が面白かったので、是非とも機会があれば「カササギ殺人事件」の方も読んでみたいと思います。
翻訳は山田蘭さんです。読みやすかったです。
それでは今日はここまで、どうやら台風が来ているようです。
皆様もお気をつけて。おやすみなさい。
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