あらすじ
オバマ、ザッカーバーグ激賞 シリーズ合計2100万部突破、現代中国最大のヒット小説
尊敬する物理学者の父・哲泰を文化大革命で亡くし、人類に絶望した中国人エリート女性科学者・葉文潔。彼女が宇宙に向けて秘密裏に発信した電波は惑星〈三体〉の異星人に届き、驚くべき結果をもたらす。現代中国最大のヒット小説にして《三体》三部作の第一作
(早川書房より)
感想・レビュー
第51回星雲賞〈海外部門〉受賞
本作は2006年代頃に中国で発表されたものだが、近年2019年頃、何やら日本のSF業界に中国から入ってきた本格SFの翻訳版が出て、大変人気だとかと耳に挟みまして。
気になって読んでみました。
序盤から中国の文化大革命から始まり、当時の政治的暴力のおぞましい文学的雰囲気とSFがどう結びついていくのやらといった感じで、葉文潔(イエ・ウェンジエ)の目的が少し垣間見える。
そして序盤が終わると一気にSFチックな展開になっていく。ここでは実質的な第二の主人公でありナノマテリアル開発者のワン・ミャオがある日突然、数字が見えるようになり、激しく混乱する。
これがゴースト・カウントダウンというVRゲーム『三体』への入口となる。
三体にログインしたワン・ミャオはその知性的ゲームに少しずつ魅了され、徐々にゲーム難易度を上げていく。
因みにこの三体というゲームを簡易的に説明すると、文明史を縄文時代辺りから作っていくシミュレートゲームという感じ。
ここで生きる三体人は”脱水“という必要ではないときに自身の体から水を抜いて冬眠出来るという、クマムシの特性のようなゲーム的な機能があり、さらに恒紀、乱紀と呼ばれる気候変動がある。
他にも太陽が三つ登ってきたりと、文明を繁栄させるのが難しい。そしてタイトルにもなっているが、この現象こそ物理学世界で言われる三体問題らしい。
ワン・ミャオの精神は侵されながらも、三体を攻略していく中で、なぜこのVRゲーム『三体』が作られたのか、その衝撃の真実と向かい合うことに……。
それは地球外生命(三体世界は実在する)のファーストコンタクトを終えた葉文潔らの組織が作ったものだったと。
そして今まさにその組織は転換期を迎えようとしていたところにワン・ミャオは巻き込まれたのであり、真実に辿り着いた時には既に三体世界の監視下にあった。
彼らは地球を「虫けら」と呼び、侵略されるのは時間の問題であった。
だがワン・ミャオたちは絶望するが、最後に心の相棒に励まされ、まだ何か自分たちにも出来ることがると続編へ続く。
とここまで話の全貌を大まかに書いてきましたが、まぁスケールの大きいこと。
序盤の文化大革命の意図が読み取れるまでに少し読みづらさを感じますが、物理学的科学全般、ゲーム世界、文学性、軽いミステリ性も相まってリーダビリティのテンポが良くなっていった印象です。
よくもまぁここまでのものを詰め込んだなぁと思いました。勝手な憶測ですが、随所に著者さんのシェイクスピアへのリスペクトも感じられますね。
全体的にもう少しボリュームを絞れないかなぁとも思いましたが、魅力もたっぷりだったので結果オーライだったと思います。
中国の小説家もすごい人がいるんだなぁと認識しました。
機会があれば続きを読んでみたいです。