あらすじ
娘の緑子を連れて大阪から上京してきた姉でホステスの巻子。巻子は豊胸手術を受けることに取り憑かれている。緑子は言葉を発することを拒否し、ノートに言葉を書き連ねる。夏の3日間に展開される哀切なドラマは、身体と言葉の狂おしい交錯としての表現を極める。日本文学の風景を一夜にして変えてしまった、芥川賞受賞作。
(文藝春秋より)
感想・レビュー
第138回芥川賞受賞作
他短編「あなたたちの恋愛は瀕死」が収録。
豊胸手術に取り憑かれた40くらいの母親と啞のようにノートに書いて答える娘が東京で女の友人と三日間過ごすという女の色濃い物語。
冒頭部分の文章から「いやどんな文章やねん」と突っ込んだものの、案外この文体が癖になって読み終えた時には独特の文才を感じてました。
そして豊胸がメインというよりかは、女として、親子としての対比とその構図から滲み出る想いがすごく印象的で楽しく読ませてもらいました。
大阪弁の塩梅も程よく文体に馴染んでいていいです。
もう一つの短編「あなたたちの恋愛は瀕死」。
これも中々毒気のあるタイトルですが、この作品も面白かった。
若い女を基盤に、蠢く都会の姿が鏡のように映し出され、人によってというより場所(百貨店・紀伊國屋書店)環境によって女の見え方が違うということなのかしら。
女、男というより人間の面白い部分が読めて、確かな才覚がを感じれた一冊でしたね。