あらすじ
「僕の全財産は、僕を殺した犯人に譲る」。
元彼の森川栄治が残した奇妙な遺言状に導かれ、
(宝島社より)
弁護士の剣持麗子は「犯人選考会」に代理人として参加することになった。
数百億円ともいわれる遺産の分け前を勝ち取るべく、麗子は自らの依頼人を犯人に仕立て上げようと奔走する。
ところが、件の遺書が保管されていた金庫が盗まれ、さらには栄治の顧問弁護士が何者かによって殺害され……。
感想・レビュー
第19回「このミステリーがすごい! 大賞」大賞受賞作
原題:「三つ前の彼」
受賞した当時からかなり話題になっていて、よく広告でも見たような気がします。で月9のドラマ化、しかも綾瀬はるかさん主演で、って早すぎません?笑
「このミステリーがすごい! 大賞」の存在は、新人賞として認知していたましたが、読むのは初めてですね。なんと、大賞賞金1200万!とこれまた賞金もすごい!
まず読んだ直後の所感としては、かなり優秀な、優等生な作品だったなぁという印象。
個人的に新人賞に選ばれる作品は、かなりの優秀作か問題作かの二択だと思っているので、本作は完全な前者だったかと。
なので、終始安定した面白さがありましたし、これは出版社は喜ぶだろうなぁと思いましたね。
さて本作は、遺産相続ものを逆手に取ったようなミステリ。
主人公は超強気な女弁護士・剣持麗子。
この主人公の剣持麗子がキャラクターとしてかなり強力。絵に描いたようなポジティブ女で、確実に苦手な人もいるでしょうけど、笑)現代の物語には、強いキャラクターは欠かせない要素ともいえる。
この剣持麗子が、序盤から会話中にシンプルに突っ込むというか、発言するところが妙に笑えてきて良かったです。まぁ鼻につくとこもそれなりにありましたが、この性格なので仕方ない。
そして「僕の全財産は、僕を殺した犯人に譲る」という遺言状が、動画やネット媒体で公開され、自分が犯人だと、日本中から犯人候補が名乗り出てくる。笑
もうこの発想の時点で、勝利しているような仕掛けも良かったです。逆転の発想とはこのことで、犯人は普通、追いかけるものであって、続々と名乗り出てくるものではないんですよ。笑
その中で、新たな殺人も起こり、一点、二点とお手本のような起承転結で、物語が進んでいきました。
ただ中盤くらいまでは面白かったのですが、新たな殺人が起きてから、主人公の強力さが鳴りを潜めはじめ、魅力が失われていくシーンが続き、このままいくといまいちかなぁと思いはじめました。
ですが最後に剣持麗子らしいというか、あの暴走運転シーンで完全にエンタメに振り切ってくれたので、逆に評価は上がりましたね。めっちゃ笑いました。
序盤にかなりの優秀作と書きましたが、まさに本作は伏線の張り方、キャラクターが登場してくる意味、構成の起伏、主人公の敗北と勝利など、全てがお手本のようで即戦力級なんですよ。
文体も今時な感じで、ライト文芸とかに近いかと思います。
ただでさえ発想力もあるのに、これだけ優秀なプロットも組めるなんて、そりゃあ新人賞くらいは軽く獲ってしまうだろうなぁというプロのレベル。
私個人的な好みとしては、もう少し、跳ねたロジックをミステリに求めてしまうのですが、この作品の性格っていうんですかね、新人賞の優秀作タイプの作品には、この形でしか着地できないので、仕方ないかという感じ。
こういう作品は嫌いではありませんが、なぜか中々次作が読む気にならないので、編集者は安定していて喜ぶのでしょうけど、読者としては、惜しい、人によっては少し物足りないような印象もあると思います。
毎度こういう作品を読んだ後って、もう一皮剥ければ、と思うんですけど、これだけ綺麗な伏線やキャラクター配置する人って、性格なんでたぶん無理なんですよね。
だから最初から問題作書く人は、逆にこういった優秀作が書けない。これが創作なんですかね。笑
で本作は一応、論理的なミステリでもあるんですけど、全体的にエンタメよりなミステリだったと思います。ちょうど謎解きはディナーのあとで、ぐらいな塩梅な感じ。
で話変わりますが、著者さんが近年よく聞く弁護士というのもあって、法律系も上手く物語に混ざっておりました。
さらに東大出身とエリート。でも今思えば意外と東大出身で小説家ってそこまで多くないですよね?あれ、そんなことないか、まいいや。笑
それじゃあ今日はもう眠いので、寝ます。おやすみなさい。