あらすじ
江戸時代、前代未聞のベンチャー事業に生涯を賭けた男がいた。ミッションは「日本独自の暦」を作ること―。碁打ちにして数学者・渋川春海の二十年にわたる奮闘・挫折・喜び、そして恋!早くも読書界沸騰!俊英にして鬼才がおくる新潮流歴史ロマン。
(KADOKAWAより)
感想・レビュー
第七回本屋大賞第一位ノミネート
冲方丁さんは初読みになります。元々第一回スニーカー大賞の受賞者でライトノベル業界では、特に名が轟いている作家さんでしたので、まさか先に時代小説で冲方作品と出会うとは思ってませんでした。
まず簡潔に本作の所感としては、うーん、良かったかなぁ、いや素晴らしかったですねぇという感じでしょうか。笑
もちろん、気になる部分も確かにありました。
ですが題材がそもそもかなり珍しいのと、それを如何にして(切り取り)描き、それを現代人に読ませる時代・歴史小説の難しいところだとは思いますが、その力量は半端なものではないと読後には感じていましたね。
ではさっそく感想を書いていきたいと思います。
時は江戸時代。後々に暦(貞享暦)を作ることになる渋川春海(六蔵・安井算哲)が主人公。
そんな春海は、まだ22歳の青二才で、その後に歴史に名を刻むような男とは真逆の今風に言えば少しヘタレな印象。
だが春海は囲碁がとても強く、家系柄、囲碁を職に登城したりしていた。そんな中である日、関という男の数術に一目惚れしたことから渋川春海の人生が少しずつ本来の方向とは違ったものになっていく……
という感じで、春海は様々な人に出会い、別れ最後の死ぬ瞬間まで描かれている本作。
ぱっとテーマをまとめると「囲碁」「数学」「天文学」「暦法学」「恋」「天体観測・地球儀作成」「徳川幕府」「家族」「友」とまだ他にもありそうですがだいたいこんな感じ。
序盤の文体は、少し変なリズム感があって読み難くかったのですが(著者自身書きにくかったのか分かりませんが)、中盤までくると文体の精度が非常に整ってくる印象で読みやすくなりました。
そしてさっき書きましたが、まず題材が「暦」っていうのが面白そうだけど、かなり珍しい。
というか少し物語としては地味なんだろうなぁとは思います。
ですがこれをここまで面白く、何より最後の妻・えんと同じ日に死んだって、幾ら何でも出来すぎだろうと思いましたけど、歴史なんで少し鳥肌がたちましたね。
物語の運び方も囲碁、算術勝負や天体観測、結婚などを使って、一枚も二枚も厚みのある物語になり、とても魅力的に読めました。
もちろん、時代小説らしく時代背景を動かしながら主人公も民もそれと共に生きていく中で、数多の失敗をし、最後の最後まで戦い抜いたその生き様は、かっこいい。
後に貞享暦は変わり、幾つかの暦を経て、現在のグレゴリオ暦へとなっていきますが、こういった本作のような人たちが命を、人生をかけて暦を作ってくれているお陰で、今の社会があるのだと。
少なからずこの「天地明察」を読むまでは暦なんて全然意識して生きてこなかったんですけど、何かきっかけを作ってくれたいい本だった思います。
今更で失礼なんですが、冲方丁さんって凄いんですね。笑
また何か別の作品を読んでみたいと思えました。
それでは今日はこの辺でおわります。お疲れ様でした。
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