
あらすじ
神紅大学ミステリ愛好会の葉村譲と明智恭介は、曰くつきの映研の夏合宿に参加するため、同じ大学の探偵少女、剣崎比留子とペンション紫湛荘を訪れる。しかし想像だにしなかった事態に見舞われ、一同は籠城を余儀なくされた。緊張と混乱の夜が明け、部員の一人が密室で惨殺死体となって発見される。それは連続殺人の幕開けだった!奇想と謎解きの驚異の融合。衝撃のデビュー作!
(東京創元社より)
感想・レビュー
第27回鮎川哲也賞受賞作、第18回本格ミステリ大賞、このミステリーがすごい!《2018年》第一位、第十五回本屋大賞ノミネート第三位
新人賞作なのに随分と売れている、ということは耳に入っていましたが、中々読む機会がなく、ようやく読めました。
今村昌弘さんは、もちろん初めてよむのですが、以前、テレビ番組で見たことがあるような、ないような、ごめんなさい記憶が曖昧で。
さて、まずは本作の正直な所感としては、うーん、最後まですごく迷いましたけど、個人的には推せる、推したいと思えました。
というのも、本格ミステリ(クローズド・サークル)として本作を読むと、少し戸惑うんですよね。
それが例のゾンビホラーとの融合にあるんですが、基本的に本格ミステリって現代で扱えるものを舞台にしないと、成立しないじゃないですか。基本的に。
ですが、本作はそれをものの見事に破壊し、読者が想像するセオリーみたいなものを超えてくるんですよね。
本格ホラーは、道尾秀介さんなどで読んでいましたが、ゾンビパニックというのは初めてでした。
人間って生理現象的に、未知のモノと出会うとまず戸惑い、その後に拒絶反応をみせるのが当たり前なので、まさにこの小説がそれで、逆に考えるとやっぱりすごいんですよね。
だからこの小説って、新しいものを求める脳がある程度準備出来てないと、途中のゾンビホラーで急激に冷めるんですよ。
だからこその準備というか、新鮮さを求めるスタンス(選考委員)がある人じゃないと受け入れにくいし、確かに新人にしか出来ないような冒険だったと思います。
実際に私も途中で「マジか……」ってなりましたけど、すぐに「じゃあ本格としてどうやるのか?」という思考に切り替えました。
でまぁ本格とファンタジー要素を混ぜるのって、想像するだけなら誰にでも出来て、あ、やっぱり無理だって途中でなると思うんですけど、この作品は真剣に、本格を成立させているんですよね。
私はどちらかというと踏み込んだ度胸よりも、ちゃんと形にしているところで評価がかなり上がりました。やっぱりミステリは最終的にそこになりますからね。笑
だから最終的に推せる、推したいという気持ちが強くなりました。
じゃぼちぼち感想を書いていきます。
あらすじは大雑把に、大学生が別荘地に行き、少し特殊ですが、そこに大学生以外の奴らもいるという展開。一応、探偵がいたり、主人公がワトソン君的な部分もあり、そこまで目新しい感じもなく、さぁ誰が殺されるんだ、という気持ちになります。
ですが、まず先にソンビパニック発生!笑
私はここで一旦、駄作かもしれないと、少し落胆しました。笑
そこから第一、第二と殺人が起きていく。なるほど、ソンビを使ってクローズドか、ネタとしては面白いけど、殺人はどうするの?という感じのまま進みます。
この辺りで面白い、というか新感覚だなぁと思ったのは、普通読者ってクローズド・サークルだと、見えない犯人の姿にヒリヒリ、ドキドキするじゃないですか。
それが醍醐味の一つでもあるんですけど、この作品ってプラスでゾンビにも襲われるかもしれないっていうホラー特有の変なドキドキ感もミックスされて、少し大袈裟にいいますけど、頭がおかしくなりそうになるんですよ。笑
その両方の緊張感がクライマックスに向けて、徐々に高ぶってきて、最後に探偵が謎を解くんですが、それが終わってもゾンビは残ってるので、エンタメとしてもまだ見せてくるのも、うーん、やっぱりすごいなぁと思いました。
もちろん謎解きも、論理的な導きですし、ホワイダニットも強烈ではないが、本格としては及第点かな、と個人的には思えましたね。
ま強いて言うなら探偵役の女の子の掘り下げが弱いので、変にキャラクター感だけが強調されてしまい、あの恋愛匂わせ必要なかったよね?となりました。
ですがこれは、作中にも出てくる班目機関という、今回のゾンビ事件の犯行組織も隠されたままで、続編に繋げる可能性があります。
というより実際にもう既に発売している続編で「魔眼の匣の殺人」というのがあるらしく、詳細はわかりませんが、班目機関なども触れているみたいです。
そこもある意味ミステリは単行本で、という評価を難しくさせているかもしれませんね。
という感じで色々と書きましたが、様々な賞を総なめしているようで、何よりおめでとうございます。
私は疲れたので、今日はこの辺でおわります。おやすみなさい、、
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