あらすじ
人類最古の文字であるメソポタミアの楔形文字や、エジプトの美しい神聖文字(ヒエログリフ)、地中海沿岸で誕生したアルファベットなど、人類の文明を支えた文字を紹介。
(創元社より)
感想・レビュー
以前、同シリーズ(知の再発見双書)の「本の歴史」を読み、とても面白く、また勉強になったので、今回は本書を手にとってみました。
さてそんな今回は【文字】の起源から順に辿っていきました。
第1章「文字の誕生」第2章「神々の発明」第3章「アルファベットの革命」第4章「写本職人と印刷術」第5章「拡大する文字の世界」第6章「解説者たち」資料編「文字をめぐる考察」
上記の題目を見ただけでも何だか、知的欲求心が高ぶってきますよね。
我々がいつ、どのようにして、文字を獲得したのか?
そもそもどうして人類は【文字】を必要としたのか?
など、文字の発生起源から資料付きで教えてくれます。
過去にネットであれこれ先に調べてしまっていたので、大方は知っている内容だったのですが、やはり本だと豆知識的や、貴重な資料画像などが載っているのがいいですね。
第4章の「写本職人と印刷術」は、前回読んだ「本の歴史」でも結構詳しくやっている場所なのですが、おそらくこちらにしかない情報も多く、またそれがとても興味深いものでとても読んでいて楽しかったです。
ただ、改めて文字を書くというのは、不思議な行為だなと思いました。
この知の再発見シリーズは本章もかなり面白いのですが、実は最後の考察編が結構面白いんですよね。
そこで書かれていた興味深い言葉を一部引用させて頂ます。
人類200万年の歩みのなかで、その200分の1の1万年足らずが「文字の時代」であり、しかも本当の意味での文字の歴史は、その半分の5000年を経ているにすぎない
(本書:文字への讃歌より)
この文章を読んだ時に思わず「ハッ」とさせられました。
よく考えればそんな事は、歴史的にみれば当たり前なんですけど、でも確かに「人類が文字を使用した歴史」は、この壮大な人類史の中で俯瞰すると、まだまだ浅いんですよね。
この浅い文字の歴史であっても、ここまで文字は多彩に変化し、圧倒的なまでに人類の道具となっていて、今や文字の無い世界は考えられない(一部、言葉だけの部族もあなどもまだあると思いますが)。
いやはや不思議なものです。笑
最初は絵だったものが絵文字となり、やがて文字になる。この絵文字から文字へと変化していく過程でも、何段階か進化があるのですが、それも言語によって要因は千差万別。
場所の環境や人種に左右され、独自の発展を遂げる。
そもそも狩猟採集や農業をしていて、線などを引き「物を数える」という発想が湧くだけでもスゴイと思うんですよね。
もしも、もしもですよ、仮にあなたが、原始的(文字も数字も持たない)な環境で暮らしていたとして、ある日生きていて「よし、モノを数えよう!」って発想の第一人者になれると思いますか?
それもこれも人類が狩猟採集や遊牧から、地に足をつけ農業をはじめ、余裕が出来てきたからこその唐突な文明発展なんでしょうけど、これまた不思議というかご都合というか。
もはや未来人がそこにいて、当時の人類に教えてあげた、という方が、仮説として納得いくような感じもしちゃいますよね。笑
21世紀に生きる我々には、文字や数字を当たり前に覚え書くという環境にあるので、中々そのスゴさを感じにくいとは思うのですけど、こうしてもう一度考えてみると本当にすごい現象だ。
とはいえ本書にも書かれていましたが、世界中の3000言語あるうちの【文字】を持つ言語は100程度みたいで、ほとんどが「喋り言語」で止まっているんですよね。
さらに使用言語は年々減っており、その背景には悲しい人類の悪行というか、蹂躙者たちの性があります。
人々が利己的に一つの文明を蹂躙する。という歴史は一体いつまで繰り返すのか。それが人間としての自然体な姿だとでもいうのか。
どうかそうではない未来が待っていると信じたいものですが、この話は本書とは逸れるのでここらでやめときましょう…。
改めて「文字を知るとは、人類の歴史を見る」ということでもあるんだなと今回学べました。
また別の知の再発見シリーズか、この手のジャンルの本を読みたいですね。
あと忘れた頃にまた再読する価値も十分にあると思える本でした。
今日はここまで。ありがとうございました。