あらすじ
ひとは過ちをどこまで、赦せるのだろう。不義の子・謙作の魂の昇華を描破した、日本近代文学の最高峰。
祖父と母との過失の結果、この世に生を享けた謙作は、母の死後、突然目の前にあらわれた祖父に引きとられて成長する。
鬱々とした心をもてあまして日を過す謙作は、京都の娘直子を恋し、やがて結婚するが、直子は謙作の留守中にいとこと過ちを犯す。
苛酷な運命に直面し、時には自暴自棄に押し流されそうになりながらも、強い意志力で幸福をとらえようとする謙作の姿を描く。
(新潮社より)
感想・レビュー
短編の名手、小説の神様とまで呼ばれた志賀直哉唯一の長編。
完結までに17年?もかかったとの事。
前回短編を23作品ほど読んでいたお陰で、より深みが伝わってきて心に染みるものがありました。
白樺派らしいと言っていいのか、志賀直哉らしいと言うのが正解なのか分かりませんが、とにかく自由で、拘束を嫌い、読み手をさほど意識しない。
そして調和、自然を貫く姿勢には、逆に読み手として心が惹かれます。
何度読んでもそうですが、志賀直哉のスマートな文章は本当に読みやすい。
なので情景描写と心情描写が手に取るように伝わってきます。
個人的には、夏目漱石先生との出来事や、あとがきに書かれている想いも貴重で、それを含めて大事な一冊になることは間違いないです。
まだ他にも読めていない短編小説も幾つか残っているので、機会があれば読んでみたいですね。