あらすじ
アメリカ大陸の先住民はなぜ、旧大陸の住民に征服されたのか。なぜ、その逆は起こらなかったのか。現在の世界に広がる富とパワーの「地域格差」を生み出したものとは。1万3000年にわたる人類史のダイナミズムに隠された壮大な謎を、進化生物学、生物地理学、文化人類学、言語学など、広範な最新知見を縦横に駆使して解き明かす。ピュリッツァー賞、国際コスモス賞、朝日新聞「ゼロ年代の50冊」第1位を受賞した名著、待望の文庫化。
(草思社より)
感想・レビュー
どうやって現代の社会が創り上げられてきたのか。何故このような不平等が生まれたのか。
それを学問的知見から人類史になぞり追っていく本書はかなり興味深い内容でした。
プロローグ「ニューギニア人ヤリの問いかけるもの」
著者が知り合ったニューギニア人のヤリという人が「あなたがた白人は、たくさんのものを発達させてニューギニアに持ち込んだだが、私たちニューギニア人には自分たちのものといえるものがほとんどない。それはなぜだろうか?」と問いかけた。
本書はこの疑問を解き明かす為に進んでいく。
第1部「勝者と敗者をめぐる謎」
第1章「一万三〇〇〇年前のスタートライン」
第2章「平和の民と戦う民の分かれ道」
第3章「スペイン人とインカ帝国の激突」
民族の中でも平和的に部族もあれば、好戦的な部族もあり、その分かれ道は後の農耕民と狩猟採集民に分かれ、社会を形成していく。
第2部「食糧生産にまつわる謎」
第4章「食糧生産と征服戦争」
第5章「持てるものと持たざるものの歴史」
第6章「農耕を始めた人と始めなかった人」
第7章「毒のないアーモンドのつくり方」
第8章「リンゴのせいか、インディアンのせいか」
第9章「なぜシマウマは家畜にならなかったのか」
第10章「大地の広がる方向と住民の運命」
狩猟採集民と農耕民族に分かれるその理由は、大陸の気候や動植物などの環境やなどに左右される。
第3部「銃・病原菌・鉄の謎」
第11章「家畜がくれた死の贈り物」
皮肉だが人類はこの病原菌と共に社会を発展させて、進化してきたらしい。
この章の流れが実に良く出来ていて、人類史の流れをなぞっているようでした。第8章は少し難しい感じもしたが。
ただ学問的過ぎて同じことを何度も繰り返すことがあり、まわりくどくも感じます。それでも人類史の過程を知りたい思う原始的欲求というのか、その熱量が伝わり私は楽しくも読めました。
近年ではサピエンス全史(上)文明の構造と人類の幸福の方が読みやすいかなと思います。