あらすじ
元刑事で一人娘が失踪中のD県警広報官・三上義信。記者クラブと交通事故の匿名問題で揉める中、昭和64年に起きたD県警史上最悪の翔子ちゃん誘拐殺人事件(ロクヨン)への警察庁長官視察が決定する。だが被害者遺族から長官の慰問を拒絶され、その理由を探ろうとする三上だが、刑事部から猛反発をくらう。長官視察をボイコットするという記者クラブ、刑事部と警務部の全面戦争、その狭間でD県警が抱える爆弾を突き止めた三上は、長官視察の本当の目的を知る。そして最大の危機に瀕するD県警をさらに揺るがす事件が−−。かつてない驚愕、怒涛の展開、感涙の結末。組織と個人の相克を息つまる緊張感で描いた著者渾身の長編ミステリ。 2013年国内ミステリベストテン2冠、2016年日本人初の英国推理作家協会(CWA)のインターナショナル・ダガー賞候補作。
(文藝春秋より)
感想
このミステリーがすごい!《2013年》第一位。第十回本屋大賞第二位ノミネート。
横山秀夫さんの作品ははじめて読みます。
まず読み終えた所感としては、凄まじい圧力、放心とも余韻とも言えるような感覚がまだ脳内に焼き付いているような感じですね。
私は単行本で読んだのですが、とにかく分厚い。そして重い。650頁近くありましたね。
毎度のことですが、単行本で450頁を超える厚みのある本を読むときは、必ず手首が痛くなる私なので、あぁこの本は痛くなりそうだなぁと思いつつ、案の定今回も痛かった。笑
さて、本題の感想をザクッりと。本作は三人称の(主人公)一視点ですね。
元刑事の三上は、一人娘が家出し、失踪中。さらに広報官に飛ばされているというのがはじまり。
妻の美那子も相当ダメージを受けており、家族は見えない壁が崩れていくような崩壊寸前だった。
すいません…大体の概要を書こうと思ったのですが、本作で起きる事件の数やアクションが事細かに起こりすぎて、少し省きます。
ということで本作をタグのようにまとめていきます。
「64(ロクヨン)十四年前の未解決事件」「匿名公表」「マスコミ」「記者会見」「県警と警視庁の闇」「上司と部下」「家族」「ライバル」「執念、怨念」という感じでしょうか。
これでもかなり省いていますが、こういった複雑な事件や感情、それが個人、組織間で絡まりあいながら物語が大きく膨らんでいき、最後の最後までとにかく目が離せないミステリ的謎をミスリードに収束していきました。
そして冒頭で明かされる一人娘の失踪はついに、分からずのままで終わります。
もしそれを序盤で知っていたら少し不満に思っていたかもしれませんが、これだけの長編を読んだあとは、主人公の三上と妻の美那子の精神と共に違った良い方向で捉えられるような気もしました。
美那子が言った「私たちではない誰か」という言葉には、例え、それが明るい方向ではないとしても、何か人間の一端を横山さんは書いていたのではないのかしらとも読んでいて思えましたね。
十四年前の事件64についても、時代が昭和の終わりということもあり、これは昔のミステリに共通するスマホがない故に出来る大事件を描いたかなと。
それを現代に解決する手段や方法。そしてそれと共に登場人物たちも時代を生きて連動していきながら解き明かしていく過程は本当に面白かったですね。
他にも登場人物たちが徐々に魅力的に動いていく、その三上との関係性なども大長編らしくしっかりと楽しめたかと。
ただ、少し上司やその階級がどの位に位置するものなのか少し分かりづらかった部分はありましたけど、然程物語には影響はなかったかなと。
あとは著者の横山秀夫さんが元々記者さんだったらしく、その辺りの描写が機微に描かれていて、読んでいて自分が現場にいるのではないのかと思える怖さや、熱量を感じられました。
このリアリティ溢れる臨場感や警察との関係性など、本当かどうかは私は記者ではありませんのでわかりませんが、読み物として大変良かったです。
全体的に内容は素晴らしいのはもちろんなのですが、個人的には凄かったなぁと深くため息をつくような、そんな感覚が本作に当てはまるように思えました。
警察小説は幾つか読んできましたが、それぞれタイプは違えどその筋のファンが多くいるのも何となく頷けるような、そんな魅力がふんだんに詰め込まれている小説でした。
最後までお読み頂きありがとう御座いました。
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