あらすじ
チャンスを摑んだのは31歳の時。2年前に応募した国連から突然書類審査に合格との知らせが舞い込んだ。
2000倍の倍率を勝ち抜き、いざパリへ。
世界一のお役所のガチガチな官僚機構とカオスな組織運営にビックリしながら、世界中から集まる野性味あふれる愉快な同僚達と、個性的な生き方をする友人らに囲まれて過ごした5年半の痛快パリ滞在記。
(幻冬舎より)
感想・レビュー
国連で働くってどんな感じなのかな?と思い、気になって本書を手にとってみました。
まずはじめに、所感としては正直想定している以上にすごい面白かったです。
国連が題材になっている海外映画は、過去に幾つか見たこともあるのですが、どれも有名な事件や不祥事を扱っているシリアスな作品が多く、それはそれで面白いです。
しかし個人的には二次大戦以降、名称を変え『世界平和』の為に働く国際連合という巨大な組織の、如何にもな現場の人ではなく、
「本部で働くひとのリアルな日常と仕事」が読みたくて本書は、そうした私の思いを叶えてくれるぴったりの一冊でした。
冒頭で著者さんも書いていましたが、これは国連という大きな組織のほんの一部の署の話に過ぎないと、守秘義務も多く細かい所は書けないと書かれていました。
国連というと国際報道などで見かけるお固めの会議などがつい浮かんでしまいますが、本書では「これは国連なのか?」と思い、つい笑ってしまうくらい緩い雰囲気などが感じられるかなと思います。
逆にそれがすごくリアルだなとも思えましたね。
まずは著者さんの流石に国連の人だなぁと思ってしまうような、羨ましいくらいのアクティブな経歴が描かれつつ(本人はそんなこと思ってなさそう)も、国連に入るまで。
読み出した時は勝手に著者の川内有緒さんは、男性の方だと思っていたのですが、途中で女性だと気づいてびっくりしました。笑
そこからパリでの面白く理不尽な日常や、国連での日本では考えられないようなカオスな環境や仕事。
びっくりするほど素晴らしい福利厚生など、他にも世界中から集まってくる優秀だけど、変わっている職員たちのユニークな会話や行動などがとても面白いんです。
私のようなこの小さな日本という島国に住み続ける人からすれば、本書で描かれている世界は、エッセイだけど、まるで小説や映画を見ているような気持ちにもなりました。笑
それくらい川内さんの前向きな姿勢だったり、挫折というか、葛藤なども上手く描かれていたかなと思います。
そしてパリでの生活や恋愛、結婚、国連を辞める。自分の本当にやりたかった事などが一冊に収まっていました。
本書の中には、色々と紹介したい素晴らしいシーンや文章が幾つかあるのですが、その中でも個人的に特に良かったかなと思うのを一部引用させて頂きます。
まず川内さんの父親の病気を知った時に出張を躊躇っている川内さんに上司が言ったこと。
人生では家族のことのほうが仕事よりもよっぽど大切だ。
(本書より)
日本ではそんなことを言ってくれる上司はそう多くはないかもしれませんが、笑)いつかこの小さな島国にもそういう文化が根付いてくれることを願うばかりです。
他にも川内さんが、中南米のコスタリカの中でも危険だと言われている「ボルーカ村」に行った時のこと。
あえて言うならば、私は世界を変えたかったのではない。いつも自分を変えたかったのだ。
(本書より)
これは川内さん自身が国連に入ったことや、これまでの人生やこれからの人生を迷うな中で描かれる文章なのですが、共感と言っていいのかは分かりませんが、素晴らしいなぁと読みながら思いました。
是非とも気になる方は一度読んでみてはいかがでしょうか。
文章も読みやすいようにとても配慮されていたかなと思います。
個人的にも結構オススメできる一冊かなと思います!
それでは今日はここまで。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
それにしても久しぶりに良いエッセイだったなぁ。