ラッシュライフ【あらすじネタバレ感想】5つの物語が繋がる伊坂劇場

あらすじ

泥棒を生業とする男は新たなカモを物色する。父に自殺された青年は神に憧れる。女性カウンセラーは不倫相手との再婚を企む。職を失い家族に見捨てられた男は野良犬を拾う。幕間には歩くバラバラ死体登場――。並走する四つの物語、交錯する十以上の人生、その果てに待つ意外な未来。不思議な人物、機知に富む会話、先の読めない展開。巧緻な騙し絵のごとき現代の寓話の幕が、今あがる。

(新潮社より)

感想・レビュー

伊坂幸太郎さんも気づけば六作品目。

本作はデビューして三作目?ぐらいらしい。プロ三作目とは思えないようなクオリティで驚きましたね。

相変わらずの凄まじい伊坂ユーモア群像劇が巻き起こります。

もちろん、警察たちは何をしているんだというヌルさもご愛嬌になるほど、エンタメに特化しており、ご都合部分に目を摘むれるほどの構成特化型のスタイル。

これを清々しいまでに貫いているのが伊坂幸太郎さんという作家のすごいところなのかもしれないと、本作を読んで思いはじめましたね。

さて、物語は5つの物語の群像劇。

解説の池上冬樹さんのリスト化が非常にわかり易かったので、一部引用させて頂ます。

A、拝金主義者の画商戸田と、彼に振り回される新進の女性画家志奈子

B、空き巣に入ったら必ず盗品のメモを残して被害者の心の軽減をはかる泥棒の黒澤

C、新興宗教の教祖にひかれている画家志望の河原崎と、指導役の塚本

D、それぞれの配偶者を殺す計画を練る女性精神科医京子と、サッカー選手の青山

E、四十社連続不採用の目にあっている失業者の豊田

(ラッシュライフ解説より)

とまぁこの5つの作品は、序盤からそれぞれの色を描いていて、同じ時間軸かと思いきや、微妙に数日違いになっている構成だと終盤辺りに分かり、流石だなぁと笑ってしまいました。

群像劇には特有の別物語が、間接的に交わる瞬間なんかも、うわぁすげぇと何度もなりました。

まさにこれも小説にしかできない面白さでしたね。

またそれがタイトルの「ラッシュライフ」と騙し絵という口絵とリンクしているのも上手いなぁと毎度関心しておりますが、今回も素晴らしい出来ですね。

私はBの泥棒の黒澤に関しては、別作品で先に知っていたので、これが伊坂幸太郎のスターシステムかぁと一人でに楽しく読ませて頂きました。

相変わらずの馬鹿馬鹿しくなるような会話から、意外と心を打つような会話まで健在。

そのユーモアと機知のバランス感も十分でよく読ませるリーダビリティとなっており、また映画や音楽、文学絵画作品等から融合させる作品小説としてのの作り方は、伊坂さんならではの唯一無二。

過去に読んだ伊坂幸太郎さんの作品たちは、本当に甲乙つけがたい。それほどまでに他作品がそれぞれの面白さを描いている。

紹介した本

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