共感覚から見えるもの アートと科学を彩る五感の世界【レビュー】文字は色付き、音は味となる

あらすじ

この万華鏡のように多彩な感覚は、何か―
聞こえる音が味になり、文字に色がつき、匂いが見える…。身体と言葉が結びつく。
ある感覚が発生すると、同時に別の感覚が呼び覚まされる共感覚。
認知科学の研究対象として注目を集め、文学・芸術にも多くの「共感覚」が見出されている。
共感覚の科学研究と文学・芸術からのアプローチを交差させ、「身体」と「言葉」から、その感覚世界に迫った。

(勉誠出版より)

感想・レビュー

少し共感覚についてネットで調べていて、一度ちゃんとした本を読んでみようと思い、この機会に読んでみました。

まぁ分厚いです。内容の目次は参考程度に引用させて頂ます。

序論(共感覚の世界ー何が起こっているのか/共感覚の科学研究)

第1部 身体(ミラータッチ共感覚と身体的自己意識/ダンスに応答する共感覚ーアラン・プラテル“Wolf”における諸要素と諸感覚の関係/共感覚的演劇を求めてー『驚愕の谷』からシェイクスピアまで/近代芸術と共感覚ー「共働する感覚」への総合芸術的問いかけ/社会は“第六感”の夢を見るか?-音楽における共感覚とその彼岸/感性の教育と共感覚ー子どもの音感受の世界/「身体で考える」建築教育ー子ども・空間・建築家の対話に見る共感覚的要素)

第2部 言葉(共感覚と言語習得/日本文学における共感覚ー宮沢賢治と尾崎翠を中心に/共感覚的表現は世界を変え得るのかーランボーの「母音」を通してみる一考察/感覚の境界の彼方にーロマン主義、象徴派、エルンスト・ユンガーの詩作と思索/ペルシア文学に見る共感覚/共感覚とオノマトペ:その事例と分析/味のレトリックーおいしさの表現と共感覚)

(勉誠出版より)

共感覚には少なくとも二つの感覚を同時に有することによって引き起こされる現象というのが有力であると記されています。

それは科学的に、心理学的、神経学的にもまだまだ不明なところも多いらしい。

それを言語学や文学絵画などその他の芸術の方面から探っていく学術的諸説がとても興味深く読めました。

その中でも一つとりわけ面白いと感じた説をご紹介します。

通常なら言語獲得などをはじめる3歳前後に爆発的にシナプスが増えて、そこから徐々に不要な脳の神経の刈り取りがあるのだが、その刈り取りがなされなかった結果、複数の感覚が同時に共鳴し共感覚を引き起こすのではないかと。

なるほど。うちの母親もよく英語やピアノをはじめるなら3歳までがとても重要だと似たようなことを言っていたのを思い出しました。笑

個人的には小説が好きなので尾崎翠、宮沢賢治辺りも楽しく読めしたね。宮沢賢治については本当に死後色々と発展を遂げる人ですがなるほど共感覚にもいたとは。

尾崎翡翠の「第七官界彷徨」は筑摩書房の全集か何かで耳にしたことはありましたが、今回気になったので読んでみようかと思います。

全体的に内容は論文スタイルな真面目な学術書なのですが、基本的に読みやすくとても興味深く読めました。

最後のオノマトペと味のレトリックと共感覚の結びつきだけが異様に難しい感じがしましたが。

最後にこの本の代表である著者さんの経歴を載せて終わります。

この本の代表著者

北村紗衣(きたむら・さえ)
武蔵大学人文学部英語英米文化学科専任講師。専門はシェイクスピア。
主な著作に、「J・M・クッツェー作『夷狄を待ちながら』における月経の表現」『英文学研究支部統合号(関東英文学研究)』 3:149–167(2011)、`Queens, Girls, and Freaks: Men in Women'sClothes and Female Audiences in Japanese Cross-Dressing Productions of As You Like It and Hedwig and the Angry Inch)', in Silvia Antosa(ed.,) Queer Crossings: Theories, Bodies, Texts (Mimesis, 2012) などがある。

紹介した本

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