あらすじ
横寺陽人は頭の中身が煩悩まみれな高校二年生。ひょんなことで“笑わない猫像”に祈ったら、心で思ったことがいつでもどこでも垂れ流しになってしまった!人生の大ピンチを救ったくれたのは、クールでキュートな無表情娘、筒隠月子―「頭の先から尻尾の終わりまで撫でまわしたくなる感じの子だなあ」「変態さんですね」「ち、違っ、褒め言葉の一種だよ!?」「裁判沙汰の多そうな変態さんですね」「!!??」とにもかくにも猫像のせいで喪われた本音と建前を奪還しようと、ふたりは協力してアニマル喫茶に行ったり水着を買いに行ったりお嬢様のペットになったり―ん?第6回新人賞“最優秀賞”受賞、爽やか変態×冷ややか少女の青春迷走ラブコメ!
(MF文庫Jより)
感想・レビュー
第6回MF文庫Jライトノベル新人賞“最優秀賞”受賞作
旧題「変態王子と笑わない猫」
今更ですが読んでみました。
全体的に安定したクオリティーなのですが、個人的にはそこまで飛び抜けた要素を感じなかったかなぁと思うのが正直なところですね。
主人公は時代が2010年代頃の出版なので、時風のせいかかなり鈍感系主人公です。懐かしい反面、やはり今読むと少々きついかしらとも思います。
作風にはそういった「いや無理があるでしょ」という感じが多々あります。
……例えば鋼鉄の王と呼ばれる姉(筒隠という珍しい名字なのに)と同じ陸上部に所属し、かつ部長に推薦させるほどの仲ではある主人公が、出会った妹の存在に結びつかないなど。
ゴリ押し展開がやや目につくのでそこが惜しいです。やはり求めるのは何年経っても色褪せない面白さであって欲しいものです。
あと文章もそこまで下手ではないのですけど、比喩表現や無理に難しい漢字、表現などを時々使おうとして作風にマッチしていない文体なのも私的にはマイナス面になりました。
新人らしいといえば確かにそうなのですが、変に背伸びせず、それぞれ作風に合った表現方を使えばいいと思います。
アマチュアなので尖り気味なのは多めにみますが、確実に作品の印象は変わるのでその辺の文体調整を心がけて欲しいですね。
とはいえ、新人賞ですからあれこれ求めるのは少々酷なので、最後に良いところも褒めたいと思います。
設定のギミックの使い方が上手かったですね。
→笑わない猫という置物のせいで、ヒロインが無表情になったり、主人公が建前を使えなくなったり、物語を動かす良い歯車になって、かつ最後にその笑わない猫の正体まで余すことなく回収しているのはお見事でした。
私は本作のアニメも見ていませんので色々とその後の展開を噂程度で耳にしたところ、タイムリープものにもなるみたいで結構驚きです。
懐かしさを求める世代の人や、逆にいま十代の高校生とかの方は一度くらい通読してみるのもいいかもしれませんね。