
あらすじ
ぼくの飼い猫のピートは、冬になるときまって夏への扉を探しはじめる。
かれは、数多いドアのなかの、少なくともどれかひとつが、夏に通じていると固く信じているのだ。そして1970年12月3日、かくいうぼくも夏への扉を探していた。あなたならどんな気持ちになるだろう?
もし、最愛の恋人にはうらぎられ、仕事は取りあげられ生命から二番目の発明さえも騙しとられてしまったとしたら……。ぼくの心は12月の空同様に凍てついていたのだ!
そんな時ぼくの心をとらえたのは、夜空にひときわ輝く〈冷凍睡眠保険〉のネオンサインだった! 巨匠ハインラインが描く感動の名作
(早川書房より)
感想・レビュー
原題:『The Door into Summer』翻訳:福島正実
タイムトラベル系のSF作品といえば色々とありますが、まずはこの名作から!的なことをどこかで聞いたことがあったので、いつか読めればと思い読んでみました。
アメリカで1956年頃に発表されているので、確かに古いですね。
そんな感じで、現代の私が読んだ所感としては、それなり楽しめたかなと思います。
流石に設定に驚くとか、近未来的設定(作中では近未来のアメリカ社会西暦2000年頃)には驚きませんでしたが、中盤ぐらいから展開的にも楽しめていけたかなと。
しかしこれがタイムトラベル系作品の初期頃だとすれば、とても画期的な作品なんだろうなとも思いました。
作中では「六週間戦争、文化女中器」など、オリジナル用語や歴史などが作られていました。
他にも「科学的にどうなのよ」という部分もありましたが、本作はどちらかというとサイエンスより、ファンタジー要素で楽しんでいくのが良いのかもしれません。
終盤でどう考えてもご都合主義的なシーンもありましたが、時代背景的に仕方ないかもしれません。
最初はもっと猫的なSFなのかなと思ったのですが、意外と猫の出番はそこまで多くなかったですね。
あとはタイムトラベルに冷凍睡眠(コールドスリープ)を掛け合わせているのは、今読んでも面白いなぁと思える要素のひとつだったかなと思います。
ざっくりと振り返っていきますが、発明が大好きな主人公が、嫁にも共同事業者にも騙され、会社も仕事もなくします。
挙句の果てに薬を打たれ、さらに冷凍睡眠させられ…笑)などなど、わりと悲しいというか辛い幕開け。
ですが冷凍睡眠後の30年後の世界で、タイムトラベルして30年前に戻り、さらに再度冷凍睡眠して30年後に行く…という展開は面白かったですね。
タイムスリップ後の主人公が、SF主人公している感じもこの頃からあるんだなぁと、そういう視点でも楽しめましたね。
ただ最後はロマンチックな感動的展開にもなりましたけど、よくよく考えたら30歳くらいの男が、11歳の女の子を好きになる…という小児性愛者みたいな展開になっており、
まぁお互いが納得してたので、それはそれで多様的な「愛」の形とでも言うんですかね。笑
あと私が読んだのが新版ではなく、旧版の方だったので、(猫が「てやんでぇ」とか言ったり、笑)少し古い表現が多かったですが、新版の方が今の人は読みやすいのは間違いないかと思います。
ただ内容は全然読めるので、古い本を読むのに慣れている方だと大丈夫かなと思います。慣れてない方だと、少し読むのが苦痛に感じるかもしれませんので、新版をオススメします。
それでは今日はここまで、お読みいただきありがとうございました。