あらすじ
統括診断部。天医会総合病院に設立されたこの特別部門には、各科で「診断困難」と判断された患者が集められる。河童に会った、と語る少年。人魂を見た、と怯える看護師。突然赤ちゃんを身籠った、と叫ぶ女子高生。だが、そんな摩訶不思議な“事件”には思いもよらぬ“病”が隠されていた…?頭脳明晰、博覧強記の天才女医・天久鷹央が解き明かす新感覚メディカル・ミステリー。
(新潮社より)
感想・レビュー
知念実希人さんは初読みになります。
まず読後感としては、序盤から中盤までいまいちだったけど、終わってみたら面白かったなぁと思えた感じでしょうか。
本作は、「泡」「人魂の原料」「不可視の胎児」「オーダーメイドの毒薬」の4つの短編をプロローグとエピローグを挟んだ連作式なんですが、序盤から2つくらいの二編が結構退屈に感じました。
新潮文庫nexだからか、医療が舞台の割に、ライト、ジュニア向けなのかな?と感じるような軽さで、謎解きと動機のレベルがあまり高くないのが原因かもしれません。
まぁ結果的に面白くなっていったので、その理由を含めて今日もポチポチと感想を書いていきます。
まず物語は、五年間外科に勤めていたが、思うところがあって内科を志し、内科見習いという形で、二人しか医局員のいない【統括診断部】に勤める独身彼女無し・小鳥遊優(ワトソン)の一人称で動きます。
そんな二人しかいない医局員のもう一人が、統括診断部の部長である天久鷹央(ホームズ)。名前は男のようだが、女医師で、わかり易くいうと、親が理事長で、かつ天才。
彼女はいつだって理論で動くので、謎に異常な興味を持ち、人付き合いは苦手。だが診断をさせれば天才的で、若くして異例の部長。
もちろん親の七光りもあるが、ケタ違いの実力で部長になったらしい。
しかも病棟の屋上に、天久鷹央の家がある。笑
そんな二人があらゆる症状(謎)を訴えた患者を診断し、事件を解決していく……という流れ。
さっき書きましたが、前半二編は退屈で、残りの二編からようやく面白くなってきました。
まず「不可視の胎児」、わかり易いほどの想像妊娠という盛大に面白くならなそうなフリを振ってから、もう一捻りのアイデアで、加速していく展開に持っていき、ようやく私も捲る頁が早くなっていきました。
そして最後の「オーダーメイドの毒薬」は、いまいちだった序盤の話を繋げる展開で、ベタな展開かもしれませんが、医療を扱ったミステリで最後まで読ませる面白さでありました。
あのモンスターヒステリック母親が、小鳥先生を本気で追いかけ回してくるシーンは、めっちゃ笑いました。面白かったです。笑
その母親事態が病気っていう理由付けなんかも良かったですね。
全体的にライトノベルのようなキャラクターの絡みが多く、ライト文芸のシリーズものという感じでしょうか。
まだまだ主人公たちの過去を掘り下げていきそうな余地も感じますし、何よりすごいのが、表紙のイラストが「灼眼のシャナ」「涼宮ハルヒシリーズ」のイラスト担当の”いとうのいぢ“さんっていう。
久しぶりにいとうのいぢさんの絵が見れました。挿絵はありませんが、章タイトルにイラストがあって、いい感じでしたね。
私は余裕がないので追いかけませんが、シリーズとして追いかけてみたら、より面白くなりそうな気もするので、気になった方は続きを読んでみるのも全然ありだと思います。
最後に著者さん情報。知念実希人さんは、沖縄県出身の現役医師だそうです。本作以外にも、医療が舞台の作品を色々と書いています。
私も個人的に別の作品が気になっているので、そっちの作品を読んだらまた感想を書きたいと思います。
それでは、今日はこの辺で終わりたいと思います。お疲れ様でした。おやすみなさい。