あらすじ
中2の夏休みの始まりに、幼馴染の成瀬がまた変なことを言い出した。
コロナ禍、閉店を控える西武大津店に毎日通い、中継に映るというのだが……。
さらにはM-1に挑み、実験のため坊主頭にし、二百歳まで生きると堂々宣言。
今日も全力で我が道を突き進む成瀬から、誰もが目を離せない! 話題沸騰、圧巻のデビュー作。
(新潮社より)
感想・レビュー
第二十一回(2024年)本屋大賞第1位ノミネート
他、様々な賞を受賞している本作。
この度、読書メーターさんが主催している『本屋大賞 予想チャレンジ』に、「成瀬は天下を取りにいく」を一位予想にしておりまして、それが見事大当たりしまして。笑
そしてなんとありがたいことに「BOOK☆WALKERで使える 2,000円分のコイン」を頂きまして、別に他の本を買っても良かったのですが、どうせなら本作を買って読もうと思いました。
そもそもどうして読んでいない本作を一位予想にしたのか?って思う方もいるかもしれませんが、私は定期的に近所の本屋に足を運び、その時には必ず小説コーナーをチェックするのですが、
本屋大賞受賞前から、本作の平積みや展開の仕方がすごくて「これはまた売れてるのだろうなぁ」とただそれだけで何となくで予想したのですが……笑
これがなんと大当たり!
まさにこの日の為に本屋に足を運んでいたのかもしれません!
読書メーターでは、定期的に抽選で献本サービスというとてもありがたい企画があるのですが、私が古内一絵さんの『キネマトグラフィカ』に当選したのはもう2〜3年以上前?になるかもしれません。
今回、形は違いますが、改めて読書メーターをやっていて良かったなぁと(単純)思いますが、皆さんフォローよろしくお願いします。
まぁこれも物語の縁ということで、さっそくまずいつものように読了後の所感から。
読み終えた時に「なんか読めて良かったなぁ…」とぼんやりと心地よい読後感が自然と残るような印象だったかなと思います。
本作は連作短編の形式をとっており、主人公の「女子中学生・成瀬あかり」を軸に、コロナ禍時代の中を物語が動いていきます。
時代の流れは早いとはよく言ったもので、コロナ禍時代がとても懐かしいような気持ちにもなりました。
全部で6つの物語が収録されていて、いくつかは成瀬あかりが主役ではないのですが、これが最終的に成瀬あかりと結びついていくような内容になっておりました。
まぁまずは何を言ってもこの強烈な主人公・成瀬あかりですよね。
「島崎、わたしはこの夏を西武に捧げようと思う」
(成瀬は天下を取りにいくより)
もうこの書き出しの一文から少し頬が緩んでしまいます。
島崎というのは、成瀬にとって唯一の幼なじみであり友達であり相方でもあります。
表紙を見た感じ成瀬が、西武ライオンズのユニフォームを着ているので、埼玉とか所沢辺りの話なのかな?って勝手に想像してしまいますが、本作は純度100%の滋賀県物語なんですよね。
そして西武ライオンズではなく、大津市にあるデパートの西武大津店のことらしいです。笑
そしてその西武大津店が閉店するとのことで、毎日夕方に生放送されるワイドショー中継に、成瀬は西武ライオンズのユニフォームを着てただ映り込むことを閉店まで毎日するという……奇行といえばそれだけなのですが、笑
それだけ成瀬を含め、住人たちにとってはそれぞれ西武大津店に思い入れがあるのが作中や別の章をを通してわかってきます。
そんな成瀬あかり史の奇行は、今にはじまった訳ではない。
かつては天才けん玉少女と呼ばれ、200歳まで生きると豪語し、中学陸上部から高校はかるた部、
突然、漫才をやることになりM-1グランプリに出たり、高校生になるとスキンヘッドにして、髪が実際にどれくらい伸びるか検証したり……他にも様々なことがあるのですが、
本当に最高すぎる主人公なんですよね。
学業も優秀で学校では表彰台の常連。さらに何でも挑戦する性格でありながら、常に無表情なので、周囲からは孤立してしまいますが、それすら咎めないというタイプ。
まさに孤高の天才少女とも呼べるのですが、しかしですね、これ最後まで読むと結構この設定が、島崎との友情展開に繋がっていて少し泣けてくるんですよね。
成瀬あかりがあまりにも凡人とはかけ離れた生き方をしているので、その為のバランサーとしての島崎なのですが、最後に成瀬あかりの人間らしさが出る所もすごく良かったです。
高校パートでは、少し恋愛?部分もあり、それが成瀬らしくもあり人間味も描かれていて、もっと好きになる。
何より成瀬あかりは、愛される主人公ですよね。
別の章では、別の大人たちの西武大津店の話もあったり、成瀬、島崎とは別の同級生の視点もあるのですが、それぞれ個性があって楽しめますし、そこから見る成瀬あかりが面白すぎるんですよね。笑
成瀬は絶対現実世界では中々いない喋り方をするのですが、読みながら笑ってしまいますし、数年後にはアニメ化、実写映画も全然あるんじゃないかなぁ。
作者もまるでゲームのRPGのような…って突っ込んでましたしね。笑
最後は本当に島崎と同じ気持ちというか、いつまでも成瀬あかりは、成瀬あかりのままでいて欲しいし、ゼゼカラというコンビは、おばあちゃんになっても続いて欲しいなぁと思うような二人の友情だったかなと思います。
まとめ
はいという感じでいかがでしたでしょうか。
コメディありつつもどこかエモーショナルな気持ちになる小説だったかなと思います。
成瀬あかりの何でも挑戦する、あの種を蒔く表現は素晴らしいですし、とても勇気がもらえますよね。
ただ今までそれなりに本屋大賞受賞作を読んでいる身として、一応書いておきますが、、、
今回本作を第1位に予想しておいてこんな事を書くのもあれですが、正直な思いとして、本作が本当に本屋大賞第1位で良かったのかな?(本作は面白いですよ)とは、少しだけ思ったのも正直なところではありますね。
これは作品のというか物語の全体的評価やレベル、器という意味ですね。
学生カーストや、人間的な書き分けもそれなりに巧みでした(デビュー作ですからすごい!)
続編も出ているので、機会があればまた宮島未奈さんの別の作品も読んでみたいですね。
そもそも本作の「ありがとう西武大津店」は、新潮社主催の「女による女のためのR-18文学賞」からのデビュー作らしいですね。
この「女による女のためのR-18文学賞」は、過去に窪美澄さんや宮木あや子さん、町田そのこさんなど数々の女性作家が出ていて、これからも注目な賞ですね。
こういうご当地を全面に推した感じの小説って、ライトノベルとかではちらほら見かけるのですが、個人的にも滋賀小説は初めてだったかかな?と思います。
話変わりますが私も数年前に彦根城や琵琶湖に足を運んだことがあるのですが、街並みとか含めてすごく良かったなぁという印象が残っています。
また行きたいですね。
それでは今日はここまで。最後までお読みいただきありがとうございました