
あらすじ
第151回芥川賞受賞作。
行定勲監督によって映画化された『きょうのできごと』をはじめ、なにげない日常生活の中に、同時代の気分をあざやかに切り取ってきた、実力派・柴崎友香がさらにその手法を深化させた最新作。
離婚したばかりの元美容師・太郎は、世田谷にある取り壊し寸前の古いアパートに引っ越してきた。あるとき、同じアパートに住む女が、塀を乗り越え、隣の家の敷地に侵入しようとしているのを目撃する。注意しようと呼び止めたところ、太郎は女から意外な動機を聞かされる……
「街、路地、そして人々の暮らしが匂いをもって立体的に浮かび上がってくる」(宮本輝氏)など、選考委員の絶賛を浴びたみずみずしい感覚をお楽しみください。
(文藝春秋より)
感想・レビュー
第151回芥川賞受賞作
纏めるとアパートに住む男の話なのだが、少し変わった住人の話でもありました。
この変わった住人の西という女の漫画家が個人的には面白かった。
少し作り物めいた感じも見受けましたが、小学生時代の野球の話で信用できる人だなと何故か思えました。
文体も芥川を獲るだけのゆったりと惹き込む何かがあります。
特に大きな事件もなかったけど、終盤に漂う哀愁はとても良かったです。
太郎は死んだ父親との希薄していた思い出を胸に、また梅の木を見にくるのかしら。
選評は割と賛否両論だったけど個人的には推せました。