機龍警察【あらすじネタバレ感想】大人気『近未来警察小説』シリーズの第一巻!

あらすじ

テロや民族紛争の激化に伴い発達した近接戦闘兵器・機甲兵装。新型機“龍機兵”を導入した警視庁特捜部は、その搭乗員として三人の傭兵と契約した。

警察組織内で孤立しつつも、彼らは機甲兵装による立て篭もり現場へ出動する。だが事件の背後には想像を絶する巨大な闇が広がっていた…日本SF大賞&吉川英治文学新人賞受賞の“至近未来”警察小説シリーズ開幕!

第一作を徹底加筆した完全版。解説/千街晶之。

(早川書房より)

感想・レビュー

2010年代の国内ミステリーのシリーズものとしては、度々こちらの「機龍警察」シリーズをよく耳にしていたので、いつか絶対に読みたいなと思っていました。

様々な賞で同シリーズの続編がノミネートされたりもしていますよね。

解説でも書かれていましたが、90年代で言う所の京極夏彦の「百鬼夜行」シリーズや、大沢在昌の「新宿鮫」シリーズなどに続く、大人気シリーズということで、さっそく読んでみました。

まずいつもの所感としては、それなりに最後まで楽しめて読めたかなと思います。

タイトルにもある通り、普通の警察ものではなさそうな感じもしていたので、こっちとしてもある程度のSFチック(手足が一部機械、サイボーグなど)な心構えで読み始めました。

しかし冒頭からガンダムのような機械が勢いよく出てきて、街を破壊したり戦ったりと、少々面を喰らいました。笑

あらすじを読んでいなかった私が悪いのですが、慌ててあらすじの方を読み直して、なるほど、そういうことか、だから機龍なのかぁと。

まず本作は「機龍警察」シリーズの第一作目となっており、著者である月村了衛さんのデビュー作にもあたるそうです。

読了後にWikipediaなどで軽く著者さんのことを調べてみましたが、元々若い頃から作家志望だったけど、アニメなどの脚本家をやっていたらしく、40代以降、2010年頃に小説家になったらしいです。

しかも本作は持ち込みスタイルでのデビューとなるので、現代日本の新人出版経緯としては少し特殊ですよね。

脚本家としてのキャリアや繋がりがあってのことなのかもしれませんが。

まぁ映画やドラマなどの脚本家から作家になった人の小説を私も過去に何度か読んでいますから、特段そこまで珍しいことでもないかもしれませんね。

月村了衛さんのWikipedia


話を戻しまして、まず本作は第三章で構成されており、三人称でありながら一視点を多用しつつも、群像劇的な展開で描かれていたかなと思います。

そして物語は、テロや民族紛争の激化に伴い発展、発達した接近戦を想定した二足歩行型有人兵器『機甲兵装』が台頭しはじめた近未来の日本が舞台となります。

この機甲兵装を用いた犯罪は、日本を大きく混乱させますが、警視庁は新たに『機甲兵装』に対抗する部署として『特捜部』を創設します。

そのリーダーとなる人間も、外務省出身という異例の経歴を持った「沖津」を部長に配置し、若手中心の優秀な専従捜査員たちを集めます。

さらに『機甲兵装』としては、最新鋭であり次世代機とも呼ばれる『龍機兵(ドラグーン)』を操縦する搭乗員として、日本人1名、外国人2名の傭兵とも契約する異例中の異例を得て、組織は構成されていました。

この『龍機兵』を扱う、3人(姿、ユーリ、ライザ)がメインどころで、本来警察署内には居てはいけないような過去をもった人たちでもあります。

そんな彼らの過去が少しずつ垣間見えながらも『機甲兵装』を用いた外国人テロリストと『特捜部』の戦いが本作で描かれていました。

事件は日本で起きてはいるものの、外国企業が介入していたり、メインどころの3人も海外過去話が多いので、スケールが自然と大きくなるところもあって、個人的にすごく良かったかなと思います。

そのスケール感が、ちゃんと事件や登場人物たちに結びついていたところがまた面白かったですし、今後の伏線のようなものもかなり張られていた印象。

何より、登場人物がどこかベタだとは思いますが、強く個性として描かれていて、その辺りなんかは流石に元脚本家らしいなぁとも感じました。

姿の性格や謎めいた過去は、間違いなく読者の興味を惹く魅力的なものです。

元ロシア民警のユーリの日本人のような熱い一面だったり、元テロリスト?のクール美人でめっちゃ強いライザだったり、まだまだこれから明かされていくのでしょう。

『機甲兵装』という特殊な設定ではありますが、軸は警察小説なので、あるあるの所轄問題だったり、義務教育の賜物のような謎の連帯感、キャリア、ノンキャリア組の矜持だったり、その辺りもぐるっと一周分は描かれていたかなと思います。

第一章は割とガンダム展開が冒頭から多めだったり、多様な登場人物と近未来的な世界観設定や用語に戸惑いを覚えます。

しかし何だかんだ慣れていき、第二章に入る頃には、面白いなぁと思いながら読んでいたと思います。

それもこれも登場人物の描き方が良かったかなと思います。

機甲兵装というSF、特撮のような展開も正直用語とかは完全に理解しなくても、読めたのが良かったかなと思いつつも、どこかもったないような気もしますが、これはジャンル的なものなので仕方ないのかなと。

何より著者さんがすごく書いていて楽しそうというか、熱量みたいなものも感じられてそこも良かったかなと思います。

全6冊?くらいのシリーズになるのですかね?読んでみたい気持ちもありつつ、どうだろうか。

個人的には著者さんの『土漠の花』なども気になっているので、またご縁があればまた出会えるかなと思います。

それでは今日はここまで。最後までお読み頂き、ありがとうございました。

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