沈黙の春【感想レビュー】利己的な無知が自然を破戒する

あらすじ

自然を破壊し人体を蝕む化学薬品。その乱用の恐ろしさを最初に告発し、かけがえのない地球のために、生涯をかけて闘ったR・カーソン。海洋生物学者としての広い知識と洞察力に裏付けられた警告は、初版刊行から四十数年を経た今も、衝撃的である。人類は、この問題を解決する有効な手立てを、いまだに見つけ出してはいない―。歴史を変えた20世紀のベストセラー。待望の新装版。

(新潮社より)

感想・レビュー

正直な話、何の前情報も入れないで読み始めたので、そもそも小説ではないのか、とまず驚きましたけど、とても興味深い内容で嬉しい誤算のような感じでした。

本書は1960年代頃に書かれたもので、アメリカが舞台。

著者のレイチェル・カーソン(1907-1964)さんは、生物学、海洋生物研究、商務省漁業水産局に勤め、野生生物の保護などに注力してきたそうです。

主な内容としては、化学薬品が活発に取り入れられた結果、自然や生命に対し、猛威を振るってしまい二次災害が起きるなど、その無知な行動に警鐘を鳴らしたものでした。

時代背景こそ古いですが、アメリカだけではなく、どの世界にも通ずる内容であったと思います。

こんな歴史があったのだな、と思う一方で、確かに、虫や植物に関しては、人間にとって都合のいいことばかりではないのも事実。

人間は食用、若しくは観賞などの価値に値するかで判断し、そうであれば過剰に保護し、そうでなければ徹底的に駆逐しようとする

その行動や意味が全く理解出来ない訳ではないし、人はそういった矛盾を起こす生物でもある。というか生物とはそういうものだと思うのですけど、但し、人間は賢すぎる故に、あまりにも他の生物たちの領域を利己的に蹂躙しすぎてしまう。

おそらくこれが本書に上がってきている問題であって、我々も再認識しないといけないと思わされました。そんな自分に何ができるのかと、言われればとても難しいなぁと情けない気持ちにもなります。

人間はこの世の頂点などではなく、自然の一部でしかない。私たちは常に自然に生かされている、それはどの生命体も同じ」という気持ちは本書を読む前から常に思い続けてはいますが、人間社会で生きている以上、どうしたってゴミは生まれるし、化学薬品を使わないで生活をするのには限界があります。

いま私が部屋で静かに本を読み、安心しながらブログが書けているのも、かつてそにあった森林や生命を破壊した結果なのだと思うと、何とも矛盾を抱えた、都合の良い生き物だなと思ってしまいますね。

もちろん世界中には、自然と近い環境で共存して生きている人たちがいることも知っていますが、それは生まれ育った環境の違いとかもありますし、これからもというより現在進行形で自然破壊は進んでいる。

いつか、本書で書かれている自然の逆襲というのが、もっと大きな規模で襲いかかってくるかもしれません。

毎日に祈り、大地に感謝して生きていきます。アーメン。

翻訳は青樹簗一さんです。

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