あらすじ
休職中の刑事、本間俊介は遠縁の男性に頼まれて彼の婚約者、関根彰子の行方を捜すことになった。自らの意思で失踪、しかも徹底的に足取りを消して――なぜ彰子はそこまでして自分の存在を消さねばならなかったのか? いったい彼女は何者なのか? 謎を解く鍵は、カード社会の犠牲ともいうべき自己破産者の凄惨な人生に隠されていた。山本周五郎賞に輝いたミステリー史に残る傑作。
(新潮社より)
感想・レビュー
第6回山本周五郎賞受賞作、このミステリーがすごい!《1993》第二位ノミネート
たまたま続くな、失踪ミステリ、ということでまた文庫680頁以上の長編でしたが、すらすらと先が気になる展開で良かったです。
物語の時代はクレジットカードが普及し始めた頃ということで(平成の初期辺り?)新鮮に読めつつ、戸籍自体を乗っ取り新たな人生を初める女が失踪という何ともスケールの大きい。
この不気味な女を追う過程でぶつかる謎と、見えて来る女の過去が読み進めるごとに変化していき面白い。
ただ最後の余韻を残す終わり方もいいけど、ここまで頁食ったならやっぱり本人から全ての動機を聞きたかったですね。笑
文章も良く、比喩表現も良い。
何より内容が面白いだけに私は余韻よりもモヤモヤが勝るなというのが正直なところですかね。
余韻を上手く使う為の終わり方としては、どこかタイミングが違うような。
失踪した彼女のホワイダニットは恐らく、というよりも暗いものなのは分かっているが、彼女が何を見て、何を感じて、殺したかもしれないし殺していないかもしれない彰子とどれほどの友達になったのか?
桜の木に行き、アルバムを残した思いの度合いを是非とも彼女の口から聞きたかった。
そこを書くのは大変で度胸が試さるし積み上げたものが駄作になるかもしれないけど、多分そこでもう一粘りあれば間違いなく直木は獲っていたのではないだろうか?とも思うような。
形にしすぎない美しさというのは、昔の作品ならではとも言えるのかもしれません。
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