あらすじ
館が沈めば、探偵も、犯人も、全員死ぬ
濁流押し寄せる館の連続殺人。
雨が止むころ、僕らは生きているのか。学校に来なくなった「名探偵」の葛城に会うため、僕はY村の青海館を訪れた。
政治家の父と学者の母、弁護士にモデル。
名士ばかりの葛城の家族に明るく歓待され夜を迎えるが、
激しい雨が降り続くなか、連続殺人の幕が上がる。刻々とせまる洪水、増える死体、過去に囚われたままの名探偵、それでも――夜は明ける。
(講談社より)
新鋭の最高到達地点はここに、精美にして極上の本格ミステリ。
感想・レビュー
このミステリーがすごい!《2022》第五位ノミネート。
「館が沈めば、探偵も、犯人も、全員死ぬ」この秀逸な帯を本屋さんで見かけて「そらそうやろw」とつい笑ってしまったのが読むきっかけになりました。
これ以上の秀逸な煽り文が私の力では思いつかず、すみませんがサブタイトルにつけさせてもらいました。笑
阿津川辰海さんは初読みです。
※ここからネタバレありですのでご注意!
読み始めてから続編っぽくて気になって調べてみましたらなるほど、あの「紅蓮館の殺人」の方かと気づく。笑
間違いなくトリックの数とそれを作中にも出てくる「蜘蛛」のように複雑に絡ませる力量は、現代でもほぼトップクラスなのではないのでしょうか。
フーとハウダニットはもう文句なしでしたね。
犯人候補が一転二転三転四転とおいおいどこまでいくねん、と多彩に変化していくので捲る頁が加速しましたね。
純粋に読んでいて感心させられました。
ちなみに私の犯人探しは全く完敗でしたが。笑
あとは高校生が主人公というので本格はかなり難しいのではないかと、読む前は少し懸念していたのですが、全然大丈夫でした。
むしろ探偵とは何なのかまでを青臭く踏み込む辺り、高校生たちが主人公っていうのは上手くハマっていて流石だなぁと思いました。
一つ贅沢なことを言うならば犯人の動機ですね。
葛城や田所、他葛城家の行動原理だったりは非常に興味深く書けているのに対して、最後の真犯人のホワイダニットが弱すぎます。
主にフーとハウに重きを置いている作品なので、仕方ないのですが、逆にこれでホワイダニットが完璧だったら確実に名作になるかと。大きなお世話ですが。
まぁ本作は京極夏彦を想起させる文庫で六百頁超えてます。
なんで、さらに本作はかなり細かいトリック詰め込みまくってでこの頁数さいているので動機にも重きを置いたら上下巻になってしまう。それはそれでバランスが難しいかしら。
まぁ紅蓮館の方は読むか迷って結局読まなかったのですが、本作を読んでから読むのが決定しました。
面白かったので著者の阿津川さんを調べてみたところ、まだ二十代の新進気鋭なので多分私とほぼ同世代なのかな、余計にすごいなと思いました。
追記(2022年5月5日):ようやく「紅蓮館の殺人」の方を読んでみましたが、内容的には、やはりシリーズ第1巻となる紅蓮館を先に読んでいた方が、良り楽しめそうだと理解しました。
ですが、先に続編の蒼海館を読んで後から紅蓮館でも十分楽しめます。勿論、どちらも単巻でも楽しめる内容なのは間違いないです。
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