あらすじ
純真な幼い少年ふたりの引き裂かれた友情に、涙。
土佐堀川に浮かんだ船に母、姉と暮らす不思議な少年喜一と小二の信雄の短い交流を描いて感動を呼んだ太宰治賞受賞の傑作「泥の河」。北陸富山の春から夏への季節の移ろいの中に中三の竜夫の、父の死と淡い初恋を螢の大群の美しい輝きの中に描いた芥川賞受賞の名編「螢川」。
(新潮社より)
感想・レビュー
第78回芥川賞受賞作「螢川」第13回太宰治賞受賞作「泥の河」
宮本輝氏初読みになります。
まず泥の河から、昭和30年代の大阪が舞台。8歳の子供が主人公。
この時代にはまだ船上で暮らす者や、馬車引きがあった事。時代と共に消えて逝く、貧しき者達を描いた本作は力作で次に読む「螢川」が不安になりました。
次に螢川、こちらも30年代。富山が舞台。
思春期特有の主人公と母親の感情が交錯して、見事に美しく詫びしい芸術へと昇華されていました。
最後の螢の描写は、中々お目にかかれない文章です。両作共に街の営みが短いながらに鮮明に書かれていて、これがまた作品を強く後押ししています。
今振り返って見ても、この二作品は本当に良き作品だったという印象が強く残っています。
素晴らしい作家さんですね。
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