あらすじ
村上春樹のデビュー作
1970年夏、あの日の風は、ものうく、ほろ苦く通りすぎていった。僕たちの夢は、もう戻りはしない――。群像新人賞を受賞したデビュー作1970年の夏、海辺の街に帰省した<僕>は、友人の<鼠>とビールを飲み、介抱した女の子と親しくなって、退屈な時を送る。2人それぞれの愛の屈託をさりげなく受けとめてやるうちに、<僕>の夏はものうく、ほろ苦く過ぎさっていく。青春の一片を乾いた軽快なタッチで捉えた出色のデビュー作。群像新人賞受賞。
(講談社BOOK倶楽部より)
感想・レビュー
第22回群像新人文学賞受賞作
初々しい春樹さんのデビュー作です。のちに芥川賞の候補にもなりました。
読み易く、軽い。主人公もどこか宙を歩いているような印象。
先に読んだのが「ノルウェイの森」だったので、進化前のようにも感じました。
ラジオと小説と音楽の融合だったり、時代背景の取り扱いや、特有の比喩表現はやはりこの時から上手いです。
構成もふわふわした感じかと思わせて、かなり計算されていそうな印象もありました。
良い文章もあれば時々粗さが目立つ。
まだ洗練されていない感じも受けました。
終盤、結局こうなんだよ、現実は。という幸せの失望と、微かな希望も感じました。
タイトルもかっこいいですね。