あらすじ
9回裏二死満塁、春の選抜高校野球大会、開陽高校のエース須田武志は、最後に揺れて落ちる“魔球”を投げた。すべてはこの一球に込められていた…。捕手北岡明は大会後まもなく、愛犬と共に刺殺体で発見された。野球部の部員たちは疑心暗鬼に駆られた。高校生活最後の暗転と永遠の純情を描いた青春推理。
(講談社より)
感想・レビュー
またまた東野圭吾さん。
割と初期あたりの作品で、調べてみたら、第30回乱歩賞で最終候補作になった作品らしいです。
その後、東野さんは第31回乱歩賞【放課後】でデビューします。
そんな経緯の本作は、スポーツを題材にした青春、だけでは終わらないミステリでした。
タイトルの「魔球」にもある通り、野球、高校球児を扱った作品。本当に色々書いてるなぁと関心しました。
私も野球はしてましたし、今も好きなので、あらすじを読んだ時に、なにこれ、絶対読みたいと思いました。
野球を知ってる人なら絶対気になるあらすじですよね。笑
まずは読んだ所感としては、終わってみれば結構悲しい話、悲劇のような感じでしたが、相変わらずミステリとして読ませる面白さでありました。
そして物語は、エースの須田が魔球を投げて、失投し、試合に負け、更に正捕手が愛犬と共に殺された辺りから動き出すのですが、もう一つの軸として、工業会社に爆弾が仕掛けられたという事件も勃発します。
最初はこの二つの事件がどうやって繋がっていくのか全くわからなかったのですが、徐々に東野圭吾劇場とでもいいますか、人間の男女関係を操ってリンクしていきました。
野球に関する話ももちろん面白いのですが、「脅迫状」や「ダイイング・メッセージ」、「追走劇」、「消えた右腕」など、ミステリの王道的な要素もかなり使われており、ある意味初期作品らしい特徴なのかなぁとも思いました。
それにしても終わってみれば、正捕手の子が可哀想すぎて、笑
エースの須田とのやりとりなんかも、どこの野球部にでもありそうな日常シーンで殺されたようなものですから、怖すぎやろ、と。笑
とまぁ犯人は、二番目に殺されたはずのエースの須田なんですけど、家庭環境のせいか、リミッターの外れ方が明らかにサイコパスですよね、あれは。
あとは義理の弟がとてもいい子なので、消えた右腕のシーンなんかもグロすぎて、酷で酷で。
証拠隠滅までの流れも、流石に上手く出来すぎかなぁと思いますが、まぁこれがないと成立しないのと、あと理論上は可能なので、多少は目を瞑りました。
物語の締め方は、東野圭吾さんらしく、ただのミステリでは終わらせないような、でもどこか青臭さもあるような感じ。
嫌いではないので、個人的には良い方に捉えられました。
全体的に安定してクオリティが高く、間違いなく安心して読める作家さんなので、また他の作品も読むことにします。
他にもまだ東野さんのスポーツミステリーがあるので、楽しみにしつつ、今日はこの辺で眠ります。お疲れ様でした。
おやすみなさいませ。