あらすじ
山中に隠棲した文豪に会うため、高松の合宿をぬけ出した僕と友人の葛城は、落雷による山火事に遭遇。救助を待つうち、館に住むつばさと仲良くなる。だが翌朝、吊り天井で圧死した彼女が発見された。これは事故か、殺人か。葛城は真相を推理しようとするが、住人と他の避難者は脱出を優先するべきだと語り―。タイムリミットは35時間。生存と真実、選ぶべきはどっちだ。
(講談社より)
感想・レビュー
このミステリーがすごい!《2020年》第6位ノミネート
阿津川辰海さんは二冊目ですね。
個人的に「蒼海館の殺人」を読んで、そちらがとても良かったので、読んでみました。
というかこっちが所謂第一巻になるのですが、まず率直に面白かったです。
なるほど、という終わり方でした。決してハッピーエンドではないんですけど、すごい心に残るセリフを残した終わり方だったので、一部引用させて頂きます。
「それでも僕は」探偵を辞めた彼女の背中にかけた彼の言葉は、ほとんど悲鳴に近かった。「それでも僕は――謎を解くことしか、出来ないんです」
(紅蓮館の殺人より)
まだ読んでない方には、なんのことだかって感じなんですけど、本作は、本格ミステリだけに留まらず、探偵論にも深く踏み込んだお話だったので、結構最後は重みのあるセリフで良かったなと思えました。
なるほど、これが続編で引きこもりスタートに繋がるのか、と一人でに納得。
さて、物語は前巻と同様、自然の猛威が館に迫るという展開。
高校生の田所(ワトソン)と葛城(ホームズ)は、合宿の近くに好きな作家の館があると知り、行ってみることに。落雷発生、火事発生。強風発生。火は山々を覆い、囲まれて帰れない。
文豪の館に避難する。先客いた。誰かが殺される。とオーソドックスな展開で、さらに十年前の猟奇殺人事件と結びつける。
ここまでは割と他作品でもあるようなザ本格なのですが、事件などが少しずつ探偵論との導線になっていて、トリック解決後も話を最後まで読ませる面白さでした。
ついつい最後まで引き込まれて、まさかトリック解決後に捲る頁が加速するなんて、思いもしませんでした。
もちろん阿津川さんのトリックを組み込む技術は、前巻の蒼海館でも散々思い知らされていたので、今巻も流石だなぁという発想力と構築力でした。
それにしても詐欺師が住みつき、盗賊いるわ、シリアルキラーもいるわって、すごい館やなぁ。笑
動機も前巻より良かったと思いますし、特に元探偵の潰し行為が。
まぁ見方を変えると、どいつもこいつも子供じゃねぇか、と思えなくもないんですけど、高校生とはいえ、葛城の青臭い感じが妙に人間味のある風に見えてきて、こんな探偵も面白いもんなんだなぁと個人的には思えましたね。
あとミステリすごい好きなんだろうなぁと、読んでいて勝手に思ってしまうほど、愛があったように思います。
私は間違えて続編から読んでしまいましたけど、ちゃんと順番に読んだら、また違った形で葛城たちを見れたんだろうなと思います。
なんか惜しいことしたなぁ、と。まぁそれくらい良かったということなんでしょう。
この流れでもう一度、蒼海館の方を読んでみたい気持ちもあるのですが、流石に読みたい本がまだまだ控えているので、厳しいか。
でももう一度読んでみたいという気持ちがあるので、皆さんは、是非とも「紅蓮館の殺人」から読んでみることをオススメします。
もちろん蒼海館からでも全然読めるので、燃やされる恐怖か、溺れる恐怖か、好みの方から読んでみるのも良いでしょう。笑
なんか他にも書きたい感想があったような気がしますが、また思い出したら更新します。
それでは今日はこの辺で。最後までお読み頂きありがとうございました。
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