
あらすじ
法曹の道を目指してロースクールに通う、久我清義と織本美鈴。二人の過去を告発する差出人不明の手紙をきっかけに不可解な事件が続く。
清義が相談を持ち掛けたのは、異端の天才ロースクール生・結城馨。
真相を追う三人だったが、それぞれの道は思わぬ方向に分岐して――?
(講談社より)
感想・レビュー
※ネタバレご注意!
第62回メフィスト賞受賞作。このミステリーがすごい!《2021》第4位ノミネート。
これは面白い。いやぁ面白い。二度言いたくなる面白さでした。
今作は法廷モノ、リーガルミステリに分類されると思うので、小難しい感じかなと思いきや、法律のことを知らない私でも楽しんで読めました。
まず第一部の導入部分から易しく、舞台は底辺法大という設定。
さらに〈無辜(むこ)ゲーム〉という、模擬法廷で学生たちが罪を裁くゲームが開かれているのですが、これがまた面白い。
そして第一部終盤からは、ミステリらしく急激に加速して幕を閉じます。
そして学生だった主人公たちが卒業し、第二部で舞台にするのは本当の法廷。
そしてタイトルが〈法廷遊戯〉。もうここからは一気読み間違いなしです。
一つ一つの出来事に全てが線で繋がっていて、ミステリ的な面白さは間違いないです。
そして罪と罰の在り方、狭い縫い目を掻い潜るような現代司法への問いかけなどは、新人レベルを逸脱しています。
終わってみれば、第一部の学生編がかなり肝な部分で、ここを基盤に作られているのが読みながら手に取るように分かってきます。
その著者の論理的に組み上げられた構成力にも感心しました。
作中で出てくる法律も、分かりやすく描写されているのも素晴らしい技量ですね。
ただ強いて言うなら、あまりにもロジックが先行し過ぎて微かな青春要素(人間ドラマ)が少し弱いということ。
本格ミステリによくあるロジックの為に、登場人物たちが駒になりすぎてる感が強く、まぁそれもジャンル的には間違ってないんですけど、その辺りが読者に気づかれない、または気ずかせない技術を覚えるとなお素晴らしい作家になると思います(生意気ですみません)。
けれどトリックのロジックは本当に無駄がなく、計算され尽くしているので、人間ドラマをそこまで介入させる余地がなかった可能性が高いとも感じました。
だからこそ法廷モノには似つかわしくないスピード感で描かけていたので、仕方ないのかなとも思えたのも正直な所です。
結果的には全て覆す面白さなのは間違いないので、これはオススメ間違いなしの大当たり作品でした。
改めてやっぱりメフィスト賞って面白いなぁ、と強く思わされた感じです。まぁそんなに多くは読めてませんが。笑
新人でありながらこれだけの力がある作品が書けるのは逸材なので、是非とも次回作以降も頑張って欲しいですね。
また機会があれば別作品が読んでみたい、そう思わされた素晴らしい才能豊かな作家さんでした。
是非とも気になった方は、一度通読してみてはどうでしょうか。
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